
壱岐神楽は古い伝統と歴史をもつ神事芸能で、他の地方の神楽組とか神楽師等の奏する神楽とは違って、神楽舞も音楽も神職ばかりで奏される、きわめて神聖視され信仰されている貴重な文化財であり、昭和62年1月、国の重要無形民俗文化財の指定を受けました。
神楽の起源は南北朝(1336~1392年)の頃だといわれ、壱岐市芦辺町箱崎・八幡神社の社家に伝わる古文書の中に、永享7年(1435年)11月に神楽舞人数のことを記したものがあり、室町時代の初期にはすでに行なわれていたことを知ることができます。
この当時の神楽は現在行なわれているような整ったものではなく、その勸法も両部習合の勸法であったといわれています。
その後、寛文初年に唯一神道の式に改められ、以来年次を経るにしたがって神楽歌も庶民に理解できるように意を用い、神楽舞の手振りなども逐次改訂修補を加えられ、現行の神楽ができていったと伝えられています。
壱岐神楽はその規模により、幣神楽・小神楽・大神楽・大々神楽の四つに分けられます。


五島の神楽は、文献によれば室町時代後期に今の神楽の原型が生まれたとあります。江戸時代中期に現在の神楽舞に整ったと言われ、400年以上の伝統を持ちます。平成14年には「国の選択無形民俗文化財」の指定を受けました。
五島の神楽を分類すると、七つに大別されます。この七つの神楽を総称して「五島神楽」というのが一般的ですが、歴史的に五島の中心であった旧福江市内に伝承される神楽を、地元の人びとは「五島神楽」といって親しんでいます。
しかし、同じ富江や玉之浦や岐宿の神楽も「五島神楽」と土地の人たちは言います。宇久島では単に「神楽」といっており、上五島の人びとは「上五島神楽」と呼んで下五島の神楽と区別しています。
現在では五島列島のすべての神楽を総称して「五島神楽」と呼ばれるようになりました。
五島の神楽七つを分類すると、以下のような区分になります。
福江神楽 | 旧福江市内の宮司が奉仕する地区の神社に奉奏される神楽【 旧福江市内全域 現在舞われている舞は18番 】 |
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岐宿神楽 | 旧岐宿町鎮座の巌立神社に伝承されている神楽で、旧岐宿町内全域の神社に奉奏される【 岐宿町内全域 現在舞われている舞は21番 】 |
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玉之浦神楽 | 旧玉之浦町鎮座の白鳥神社に伝承されている神楽で、旧玉之浦町内に伝わる神楽【 但し、荒川地区(荒川、竃、丹奈、幾久山の各郷)には富江神楽が伝承されている 現在舞われている舞は19番 】 |
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富江神楽 | 旧富江町鎮座の富江神社に伝承されている神楽で、旧富江町全域に伝承されている神楽 |
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有川神楽 | 旧有川町の全域に伝わる神楽 【 但し、鯛ノ浦地区には、上五島神楽が伝承されている 現在舞われている舞は15番 】 |
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上五島神楽 | 旧新魚目町と旧上五島町に伝承されている神楽。
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宇久の神楽 | 旧宇久町の神島神社と宇久島神社に伝承されている神楽。
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この七つの五島神楽はさらに芸態の上から二つの系統に分かれます。「五島藩系の神楽」と「富江藩系の神楽」のニ系統です。
五島藩系 |
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福江神楽、岐宿神楽、玉之浦神楽、宇久島の神島神社神楽
富江藩系 |
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富江神楽、有川神楽、上五島神楽、宇久島の宇久島神社神楽
この中で、有川神楽は、五島藩領内でありながら、その芸態や神楽歌や舞歌等から上五島神楽と酷似しており、富江神楽系統に属します。
宇久島は神島神社神楽が伝わる六か郷が五島藩、宇久島神社神楽が伝わる三か郷が富江藩という歴史経緯から、双方の神楽の芸態は異なっています。
さらに神島神社神楽と宇久島神社神楽は、それぞれの同じ系統の他の五島神楽とも音曲や芸態が違います。
五島神楽は、畳又は板張り方一間の広さを舞座とし、太鼓、笛のリズムに合わせ、躍動的な舞や衣冠装束のみやびな舞また表情豊な面舞など、一つ一つがメリハリの効いた特色ある舞神楽です。各地区によってまちまちですが、秋の例祭等で数多く奉納されます。
よって、五島神楽の分類をより細分化して正確を期せば、宇久島の神島神社神楽と宇久島神社神楽を分けて、合計「八つの神楽」に分類するのが正確ではありますが、現在、両神社の神楽の伝承が休止状態であるため、宇久島の二つの神楽を「宇久の神楽」として一つに取り扱い、五島神楽を「七つの神楽」として分類しています。


元禄時代、平戸藩主 第29代天祥 鎮信公の頃、家臣の橘三喜 (たちばなのみつよし) が古来から伝わる平戸の神楽を基礎としつつ、諸国の神楽を見てまわり、粋を集めて完成させたのが平戸神楽といわれており、松浦家の手厚い保護を受け現在に伝承されてきました。
神楽の舞は全部で24番までありますが、奉奏曲目の数などで小・中・大・大大神楽の4種類に分けられ、24番まで舞われるのは毎年10月26日の亀岡神社の例大祭で奉納される大大神楽のみとなっています。